第16章 Murderers
「でも稀咲は今回は死んでるから…」
『…』
「本当に死んだのか?」
「え?」
「稀咲は本当に死んだのか?橘ナオト。
高宮…テメェ何か仕組んだんじゃねえか?」
ゆっくりと、伊織さんは視線を大寿くんに向ける
「タケミチくん。
黒川イザナについて調べました。
黒川は恐らく警察関係者に顔が効く。」
「え?」
「黒川は予想以上の大物です。
そして…昨日伊織さんについては少し話しましたね。」
「…稀咲を死人にした。
そうだろう?」
『…』
「殺人、窃盗、傷害…
さまざまな嫌疑をかけられている稀咲を海外に逃し、死体を用意してそれを稀咲に偽造した。」
「そんな馬鹿な…それじゃあ稀咲は…」
「生きています。
そして死体の偽造なんてできる人間はそういない。」
「お前だろ?高宮。
その死体弄ったの…」
ナオトは遠慮がちに伊織さんに視線を向けながらそう言うが、大寿は彼女を見下ろし笑いながら歯に衣着せずに問いかける
伊織さんは真っ直ぐに大寿くんの目を見ながら、淀みなく、淡々と答えた
『…そうね。
確かにそんなオペをした。』
「伊織、さん…」
『死体の偽造はそんなに難しいものじゃない。
割とすぐ終わったのを覚えてる。』
「ハッ…そうかよ。」
その返答に笑みを消してタバコを灰皿に押し付ける大寿くん
伊織さんは表情になんの変化もないまま、立ち上る煙をぼうっと眺めていた
…そうだ…伊織さん、今は所謂闇医者…
元々名医だったんだ
そんなことくらい訳ないのだろう
「佐野は死んじまった。
稀咲は海外、高宮は何故か警察とここにいる。
そうなれば…今の東卍の実質トップは黒川イザナだ。」
「コイツが東卍のトップ…!?
なんでこんな奴が…」
「わからない。ただ…佐野はイザナに龍宮寺堅以上の信頼を置いていたと聞いてる。」
「ドラケンくんより!?」
「ああ。まぁ、テメェはまた別だろうがな。」
『…』
大寿くんは伊織さんの方を見ながらそう言う
一体何者なんだよ…黒川イザナ…!!!
バン!!!
「伊織さん!!大寿!!花垣!!逃げろ!!!!」