第16章 Murderers
「あ?オイオイ…テメェ今指名手配中だろうが」
『…』
待ち合わせ場所で俺たち…いや、伊織さんを見て大寿くんは開口1番そう言った
確かに…そりゃ急に指名手配犯が現れたら驚くわなぁ
「えっと…こっちが俺の地元の後輩で今警察やってる橘ナオト。」
「よろしくお願いします…」
「警察?お前コイツと一緒にいていいのかよ?」
「まぁ…良くはないですけどちょっと色々あって…」
「ふん、まぁいい。
そんな女連れてんならさっさと店に入るぞ。
誰に見つかるかもわかんねえ。」
『…』
俺たちは大寿くんの後ろを歩きながらさっきのナオトとの会話を思い出していた
─
──
───
「えっ!?過去の東卍を知る人と出会った!?」
「ああ!多分今は不良とかそういう世界から足洗ってカタギの人だ。
信用はできると思う。
今日の夜会う約束をしてる。」
「そうですか。なら僕も行きます。」
『私も行く』
「…え?」
『私も行くと言ってる』
「でも…」
「…わかりました。
タケミチくん、待ち合わせは何時です?」
「夜の9時…」
「9時ですね。
公共交通機関は使えないので近くまで車で行きます。
伊織さんは首のタトゥーが隠れる服を買ってくるのでそれで行きましょう。」
『…』
───
──
─
まさか伊織さんが来ると言い出すとは思わなかった
でも…自ら動いたのは初めてだ
伊織さん自身、この未来を変えたいという気は残ってるのか…?
そのためにも思い出したくない記憶にも打ち勝とうとしているのかもしれない
足早に道を抜け、敷居の高そうな飲食店へ足を踏み入れると裏の通路を通ってVIPルームというにふさわしい大きな水槽のある部屋に通された
中には2人の人影があり、伊織さんを視界に移した瞬間これでもかというほど目を見開いた