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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第16章 Murderers


「どの情報も確信には欠けるものばかりです。
ですが少なくとも、伊織さんは闇医者としてそれらの中核を担っていたことは間違いない。
…恐らく今の彼女の知識はもはや通常の医師達の遥か上を行く…」

「伊織さんが…」

「…目を覚ました時、すぐに左腕の注射痕にも気づいていたようですし…」

「…」





そういえば、左腕の方チラッと見てたな…
採血の後のシールとかも貼ってなかったのに…気づくもんか?普通…





「でも…それと過去のことを話さないのは別問題だろ?
話したくないとか思い出したくないとかもわかるけど…ナオトの言う通り伊織さん自身に罪はない!
過去を変えれば全部救われるのに…」

「多分ですけど…本気で覚えていないんだと思います。」

「え?」

「先程彼女は薬物中毒だったと言ったでしょう?
元の伊織さんの人格ではここまでの犯罪に耐えられなかった。
だから彼女は自分を守るために、犯罪組織である東卍に居続けるために薬に手を出した。
その中で何度も何度も最も忌々しい記憶を忘れ去ろうと苦悩し続けた。
その結果、本当に思い出せなくなってしまったのではないでしょうか。」

「そんな…」

「実際薬物中毒者にはよくあるんですよ。
忘れたい、思い出したくない、消し去りたい。
何度も何度も繰り返しそう思っているとその部分のことが本当に思い出せなくなるという脳の作用です。
記憶としてはしっかり眠っていても、自分の力で辿ることが出来なくなってしまうんです。」





そんな…そこまでして思い出したくないことってなんだ…?



─俺たちの人生は苦しみだけだったなぁ



あのマイキーくんの言葉の根幹もそこにあるのか…?





「…とにかく、今はタケミチくんが過去で見てきたことから辿るしかないですね。
一旦向こうへ戻りましょう。
あんまり伊織さんを1人にしておくのも怖いですし。」

「ああ。」






そう言って、ナオトは部屋の扉を開けて廊下に出た
伊織さんの記憶に頼らなくったって、未来ならまだ分かることがあるかもしれない

その小さな希望を胸にしっかり床を踏みしめながら前を向いた
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