第16章 Murderers
ピコン
ピコン ピコン
『…』
何度も何度も鳴るメールの通知音
ベッドの上で腐る私
ただ液晶に写る文字を目で辿る
─壱番隊3名渋谷にてテンジクに襲撃
─テンジクは横浜のチーム
─横浜天竺、川崎の元総長モッチー在籍
─壱番隊隊長代理、副隊長含む数名モッチーと交戦
─弍番隊新宿にてモッチー率いる天竺と交戦
─壱番隊隊長代理、副隊長、4番隊隊長、副隊長、横浜へ奇襲
─渋谷にて複数メンバー斑目と遭遇
─弍番隊より、灰谷兄弟の所属を確認
『…』
横浜…
横浜から東京まではそう遠くない
バイクで下道通っても1時間程度だし、高速使えばもっと短時間で着く
最初に報告上がってるのが渋谷駅周辺に固まってる…
横浜なら東横線で一本で来れる
それから新宿方向に移動していったのか…
それにしても早いのはその場所に土地勘のある人間がいるから
灰谷兄弟は六本木が庭だ
渋谷と新宿のあいだに陣取る彼らなら誘導するのは容易かろう
『…』
携帯の電源を切って足元に放り投げる
最初の連絡からこうなることくらいわかってた
連絡を受けた時やるべきことはたったひとつ
向こうは私が麻痺してるあいだに散ったメンバーを1人ずつ確実に潰していく
なら私は全員に天竺が攻めてくることを伝え、場所ごとに集合場所を作ればいい
そしてその場その場に幹部を置く
あとは現場の子たちが勝手にやるだろう
天竺だって隙を狙って来てるんだから反撃されるなんて考えてもないはず
それだけで被害は最小限に留まるしこちらも多少天竺を削れる
でも、何もしなかった
『…どうでもいい』
天竺も東卍も、何もかもどうでもいい
この時代に私の用はない
何も覚えていない私には、何の価値もない
嗚呼、このまま消えてしまいたい