第16章 Murderers
次の日、俺と千冬ははやる気持ちを抑えながら伊織さんの家へと向かった
なんとかこの状況を打破する糸口が欲しい
「ん?あれ…」
「場地…さん?」
「あ?」
伊織さんの家の前で扉に背を預けたまま座っている場地くん
千冬の声に怪訝そうな顔を向けながら口を開く
「お前ら、、、んなところに何の用だ?」
「えっと…伊織さんにちょっと用があって、、、」
「伊織に?わざわざ家来てまでか?」
「まぁ…連絡取れなくて…」
一応、家に行く前にメールと電話は試した
だけど予想通り返事もなくて、正直安否確認も兼ねて訪ねたところもある
場地くんは頭をガシガシと掻きながらさらに言葉を紡ぐ
「あー…俺らも連絡取れねえって思ってさっき来たとこだ。
一人暮らしだし…家ん中でなんかあったんじゃねぇかってマイキーと2人で来たんだわ。」
「え…」
「なんか…って、、なんかあったんですか!?」
「いや、んな大事じゃねぇよ。
アイツも俺らが来た時に起きたみてぇで、扉越しにインフルになったって言ってた。
だからしばらくは外出れねーってよ。」
「インフル…?」
「ったく…体調悪い時くらい頼れってんだよ。
昨日も自力でビョーイン行ったらしいしよぉ…」
「…」
「…」
違う…
千冬も同じことを思ったようで2人でアイコンタクトを取る
伊織さん、外に出る気が無いんだ
俺たちじゃなくてマイキーくん達相手にも顔を見せないなら、正直厳しい
「あれ…じゃあマイキーくんは?」
「マイキーならエマと一緒に買い物行ってる。
体調悪いならなんかすぐ食えるもんとか買ってた方がいいだろってエマが…」
「そうなんすね」
「でも確かアレだろ?
インフルってしばらく外出れねービョーキじゃなかったか?」
「まぁ、そうですね…」
「アイツ1人で大丈夫かよ…
さっきから三ツ谷とか誰かに看病頼むか?って言っても『移るから絶対入るな』の一点張りだ。
俺風邪とか引いたことねーから大丈夫だってのに…」
「あはは…」
風邪引いたことないはそれはそれでヤベェだろ…
そんな思考が頭によぎりながらも目の前の扉を見て溜息をつく
…伊織さん、やっぱり相当塞ぎ込んでるな…