第16章 Murderers
「っ!?伊織さん待っ─パン!!!
「…え、」
すぐそばで鳴ったけたたましい音に意識をやっとこの状況に向ける
目の前には膝にマイキーくんの頭を乗せ、手には煙が立ち上る銃を持った伊織さんがいた
その手をナオトが肩で息をしながら空へと向けている
「ハァ、ハァ、、あっぶない…」
「ナオト…?」
目の前にいたのに、あまりに自然に手を動かすのでそんな危険な気配すら感じなかった
ナオトが止めていないと思うとゾッとして、今になって心臓が慌ただしく音を鳴らす
『何で…邪魔をするな!!』
「伊織さん!落ち着いて下さい!!
まだ終わりじゃないでしょう!?」
『うるさい!!万次郎のいない世界に生きる意味なんてない!!』
「まだやり直せるじゃないですか!!」
『うるさい離せ!!』
ナオトが銃を取り上げようとするが、伊織さんはそれを拒絶し、隙あらば自身の頭へと銃口を向けようとする
伊織さんが自殺を図り、ナオトがそれを止める
その構図は理解できるのに俺の身体はピクリとも動かなかった
「っ!タケミチくん!!
このままじゃダメだ…!!一旦過去に…!!」
「え、」
「早く!銃のある今、僕たちに彼女を止める術はない!!」
『やめて!!』
「あ、ああ!」
バチン!!!
『ぁ、、まんじろ…』
言われるがまま差し出されたナオトの手を取ると、背中の方へ向かって意識が落ちていくのを感じた
最後に伊織さんのひどく悲しそうな声が聞こえたような気がした