第16章 Murderers
「ふふ、ありがとう、タケミっち。」
「え?」
「俺を慰めてくれるんだな。
…嘘でも嬉しいよ。」
俺とは違う方向を見ながらそう言葉を落とすマイキーくん
…もう焦点が合ってない…
目が…
『やだ…万次郎…』
「伊織…」
『いやだ…』
「…お前は、まだ、来るなよ…」
『一緒に…連れてってよ…』
「ダメだ」
『万次郎…』
マイキーくんは俺が握っていない方の手で伊織さんの頬に触れ、そのまま後頭部に手を回して互いの顔を近づけた
「はは…変だなぁ」
『なに?』
「…お前の手、いっつも冷てえのに…今は…すっげえあったかい」
『…万次郎?」
「…」
「マイキーくん?」
伊織さんの顔に触れていた手がするりと落ちた
伊織さんははくはくと口から声にならない空気を吐き出すと、マイキーくんの顔を見て悲痛な声を上げた
『ああ…!万次郎…?ま、じろ…
なんで…やだ…いやぁっ!!』
「マイキーくん…」
『───!!!!』
─今日からオマエ、俺のダチ!な!!
─ばぁ♡
─オマエは強い!
─兄貴のように叱ってくれ
─タケミっち!!
耳に残っているマイキーくんの言葉が次々に現れては消え、思い出と共に流れてくる
目の前にいるはずの伊織さんの声すら耳に入らず、俺の脳内はただ過去の笑顔のマイキーくんだけが溢れていた
『…待ってて…』