第16章 Murderers
それからは目まぐるしく時間は過ぎていった
指定された日にちゃんと到着するように飛行機のチケットを取ったり、期限の切れたパスポートを取り直したり、長期の休みを慌てて職場に申請したり…
そんなことをしているとあっという間に約束の日になった
なんとか間に合ったけど…なんだか現実味がなくてまだふわふわしてる
ここにマイキーくんと伊織さんが…
絶対に会えるという保証なんかない
けど、もし会えるなら…初めてだ
初めて未来のマイキーくんに会える…!
「よいしょ…」
コンクリート剥き出しの建物の中に塀を乗り越えて入る
中も瓦礫でいっぱいで、フィリピン特有の蒸し暑さも相まってすぐに息が上がる
未来のマイキーくん…どんな風になってるんだ?
やっぱり変わってないのかな…?
会えたら何を話そう…
「にしても…すげぇ廃墟。」
日本にはない景色に思わずそう言葉を漏らす
…でも待てよ…マイキーくんが変わってない…?
いや、変わってないわけないじゃん!?
みんなを殺してるかもしれないのに…!
そう思うと一気に体の芯が冷えたような感じがして、ヒュッと息を呑む
ここにいるのは俺の知ってるマイキーくんじゃないんだ
12年経って変わってしまったマイキーくんかもしれない
伊織さんは…どうしたんだろう…?
ナオトが言う通りならあの人は未来に帰った瞬間からこの世界のマイキーくんと一緒にいたはず…
無事…だよな…?
…勢いで来ちゃったけど、よく考えるとやばくね!?もしかしたら殺されるかも…
いや!寧ろ殺すために呼び出したのかも!
…今からでも帰るか?
ゴクリと喉を鳴らし、怖気付いて後ろを振り返る
「あれ…ここって…」
─むせ込んじまいそうな灰色の空の下でさ、天井ぶっ壊れた廃墟に大量のスクラップ─
【いつか話したあの場所で─】
「ここだ…」
マイキーくんのお兄さんがバブのエンジンを拾った場所…!
なんか感動!!
「…タケミっち?」
反射的に声のする方へ視線を向けると、そこにはあの頃と変わらない目をした君がいた