第15章 Merry X'mas
バブー……
マイキーくんに言われるがままバブに乗せてもらって街中を走る
流石にこの時間だ
クリスマスの喧騒は既に引いていて、人工的な灯りだけが聖夜の残像として街を彩っていた
「…」
「…」
マイキーくん、自分から誘ったくせに何も言わない
でも、気まずい訳でもない
…やっぱりマイキーくんは不思議だ
みんなといる時は怖くて近寄り難いのに、こうやって2人でいると…なんか…穏やかでなんでも話してくれそうな気がする
そして少しだけ伊織さんと似た雰囲気もある
…上手くは言えないけど
「…マイキーくんって親は?」
「ん?いねえよ。
じいちゃんとエマと3人暮らし。」
「へぇ!おじいちゃんっ子なんですね!意外!」
「エマと母ちゃん違うってのはこの前話したろ?
アイツの母ちゃん、10年くらい前にウチにエマ置いてどっか行っちゃった。」
「うわぁ、、、サラッと壮絶…」
思わず率直な感想が口から零れる
…本当にこの人今ならなんでも話してくれそう
「伊織さんは?」
「伊織?アイツも親いねえよ?
伊織がウチに来だしたのはエマが来た時よりもっと前から。
兄貴が連れてきたのが始まりだった。」
「お兄さんが?」
「うん。
…兄貴が俺たち3人の親代わりだった。」
マイキーくんの声色が少し変わる
懐かしむような、それでいて寂しそうな、そんな声
「何をするにも10コ上の兄貴の後ろついていってさ、いろんなことを兄貴に教わった。」
「…いいお兄さんだったんですね…」
「ああ。
…だから、たまにわかんなくなる。
当たり前のようにいた兄貴がいない。」
「…」
「それがどういうことなのか理解できなくなる。
…そういう時はいつも頭が真っ白になって、右も左も上も下もわかんなくなっちまう。
何が正しくて、何が間違ってんのか。」
「…マイキーくん」
「…多分伊織も同じだ」
「え?」
「俺がそうなってる時、真っ白な頭の中にアイツの形だけはなんとなく見えてる気がする。
それにふと我に返った時、アイツも大体遠くを見て放心してることが多い。」
「…」
「…」