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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第15章 Merry X'mas


「…人を愛したことがない、と言ったか…」

『まぁ、そうですね。』

「佐野のこともか…?」

『まさか。私と彼はそういう関係じゃないですよ。
大切であることは間違いないですけど…愛、とは違う気がします。』




私からしたら、純粋に愛していると口にできる大寿さんはすごいと思う
愛が何なのかわからない私とは裏腹に、彼は自分なりの愛を見つけている




「それなら、、、家族は?」
 
『家族ならいません。』

「…?」

『家でも私はひとりです。
別にだからどうこうというわけではないですが。』

「…」

『家族がなんたるかも私は知らないけれど…あなたの守ってきた家族も別に間違えているとは思いません。』




大寿さんだって1人だった
彼もまた家族を1人で守ってきたんだ

そこには誰にも想像できない苦労が少なからずあったはずだ





『家族って…難しいですね…』

「…」

『…傷口、見た感じでは手術は必要なさそうです。
少し縫って安静にしてればくっつきますし、後遺症なんかもないと思います。
あとは病院でしっかり治療してもらってください。
…それでは、お元気で。』




最後に医療機器のこともお世話になりました、と告げると私も階段の下で待つたかちゃんの隣に並んだ
私の姿を見ると安心したようにたかちゃんは笑う




「高宮…」

『?』




帰ろうと一歩踏み出した所で、階段の上から大寿さんが私の名を呼ぶ
ゆっくりと振り返ると、大寿さんの瞳と目が合った





「お前なら、愛する者を守るためなら人を殺せるか?」




たかちゃんは首を傾げながら私たちを交互に見つめる
大寿さんはその金色の瞳を私には真っ直ぐ注いで答えを待つ




『…そうですね…』

「…」

『私は…大切な人のためなら、この手をいくら血で染めることも厭いません。』

「伊織…」

『生憎、私の中での優先順位はシンプルなので。』

「そうか…」




現に、私は既に罪人だ



大寿さんと最後に視線を交わすと、彼は僅かに目を見開いた後に小さく微笑んだ
私は少し目を伏せて彼に背中を向けるとたかちゃんと共に白い雪の地面を踏み締める

足元の雪はいくつかの足跡でもう少し黒ずんでいたけど、吐く息はさっきと同じように白く揺らめいて空へと溶けた
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