第15章 Merry X'mas
『そっか。
じゃあ少し大寿さんと話したいから2人にしてもらえる?』
「大丈夫か…?」
『大丈夫。
彼にもうそんな気力はないし、万が一のことがあってもたかちゃんが来るまでの数秒くらい自衛できるわ。』
「なら…
わかった。目の届く所で待ってる。」
『うん。ありがとう。』
私はすっかり静かになった教会の中を1人歩き、入り口で未だ座り込んでいる大寿さんの後ろに膝をついた
『大寿さん。
刺されているところ、少し診ますね。』
「…」
応答はないけど、失礼します、と一言声をかけて傷口の周りを観察する
…すごい…
本能的に身体を捻ったのか、僅かに危ないところから外れてる
それでも傷自体は深い
この傷でよく3人も相手にしてられたな…
出血云々の前に普通に痛いだろうに…
「オイ…」
『はい。』
「何故全て知っていてお前は八戒を助け続けた…?
お前なら…佐野を手元に置いているお前なら、その気になればいつでも潰せたはずだ。」
『…そんなの、柚葉が望まなかったからですよ。』
「それだけか?」
『それだけです。』
こちらから勝手に片をつけたって意味はない
柚葉から助けを求められてからでなければ、それは本当に彼女を利用しただけなのと同じだ
「…俺は…俺は確かにアイツらを愛していた…
誰よりも大切だった
ただ八戒に強くなって欲しかった」
『…』
「こんなにも…愛していたのに…」
愛、ねぇ…
『人を愛したことのない私には分かりかねますが…何事も押し付けることは相手のためにはなりません。
それは愛も同じではないですか?』
「…」
『残酷な話ですけど、与えるものが全て相手の心を満たすとは限らないものです。』
所謂、余計なお世話というやつだ
こっちは親切なつもりでも、相手からしたら鬱陶しいこともある
…それが拗れて拗れてこうなってしまったのだろう