第15章 Merry X'mas
全部話したのは中学に入ってすぐの頃
伊織と出会って一年ほどたった頃だったか…
それだけ長いこと一緒にいたら流石に察していたのだろう
伊織の表情はいつもと変わらなかった
『そっか…』
「…」
伊織はそれだけしか言わなかった
それから、伊織は手当をしながらいろんなことを教えてくれた
受け身の取り方、応急処置、言葉の言い換え方
身になることばかりだった
無理に解決しようとせず、私のペースに合わせてくれているのがわかって私も楽だった
自然に笑えるようにもなって、伊織と八戒がいたから頑張ってこれた
間違いなく心の支えだった
でも…ハロウィンの日…
「高宮伊織、アイツは東卍の幹部だ」
「え、」
「俺が今日知ったってことはテメェももちろん知らなかったんだろう。
だが…これでアイツがわざわざウチの事情に首を突っ込んできた理由がわかったなぁ?」
大寿が笑いながらそう言った時、ガラガラと音を立てて何かが崩れていくのがわかった
騙されていた?
利用されていた?
全部嘘だった?
…違う
そんなことはどうでもよかった
「…なんで…なんで言ってくれなかったの…?」
対等ではなかった
それがショックで仕方なかった
…そりゃそうか、汚れた私と綺麗な伊織
同じはずないか…
最初に会った時から何もかもが違った
それも忘れ、驕っていた自分がなによりも恥ずかしくて悲しかった
それからは早かった
伊織も、もちろん三ツ谷も頼れない
1人でやらないと
別に大丈夫、伊織たちと出会う前に戻るだけ
子供の頃でも出来てたんだ
今の私に出来ないわけがない
だから、稀咲の言葉に食いついた
「八戒を守ってやれ」
手が震えていたのは、何故だったのか
それを考えるのも放棄した
でも…
「八戒を守るぞ!!!」
「おう!」
「オラッ!」
─いつでも頼って、連絡して
柚葉のタイミングでいいから
1人で…?
そんなこと…
「柚葉は絶対ぇ俺が守る!!!」
─人は絶対に1人じゃ生きていけない
必ず誰かの助けが必要な時が来る
ママ…私、1人じゃなかったよ
みんなが私たちを助けてくれたよ