第15章 Merry X'mas
「柚葉…」
「なーに?」
「柚葉は、お父さんのこと好き?」
「んー、わかんない。
あんまりお話ししたことないもん。」
「…そっか
ごめんね、柚葉…」
「ん?」
「私が柚葉を守るね。」
「…大丈夫だよ!
ママはお家のこと気にしないで、早く悪い病気治してね!」
それから間も無くママが死に、大寿の暴力が始まった
毎日毎日…トイレの電気を消し忘れた、風呂の後に髪の毛が落ちていた、花瓶の花が枯れていた
理由なんて数え始めたらキリがない
とにかく、何かしらの理由で殴られ蹴られ、髪を引っ張られた
「…今日ね、八戒が小学校に上がったの…」
束の間の安らぎは、ママの墓参りという名目で1人で外に出る時間だった
…この時間だけは大寿の暴力に怯える事もなく、本音を曝け出せた
「心配しないでね…ママ…
家族は私が守るから…だから…いつかまた、ギュッてしてね…っ!」
ママの温かい腕の中が恋しくて恋しくて堪らなかった
安心して体を預ける場所が欲しかった
『大丈夫?』
伊織と出会ったのは数年前、小学生の頃だった
慣れない手つきで絆創膏を傷口に貼ってくれた
少しシワになって不恰好だったのを覚えている
『私伊織。
あなたの名前は?』
「柚葉…柴柚葉。」
『この怪我どうしたの?
誰にやられたの?』
「…転んだだけ」
『ううん。違う。
転んでもこんな傷にはならない。』
今思えば不思議な子だった
初対面なのにそんなことを聞いてきて、怪我だって誰かにつけられたものだとすぐにわかった
「アンタには関係ない!」
『あっ!』
最初はあの全て見えているかのような眼が嫌で、伊織を拒んだ
傷だらけの自分と、傷ひとつない伊織
自分が惨めで仕方がなかった
『あ、』
「…」
『また怪我してる。
でも大丈夫。今度は絆創膏以外にも持ってるから。』
伊織は最初の日以来、怪我の原因を聞かなくなった
何度か会ううちに、私も少しずつ話すようになって、伊織の手当もだんだん上達していった
そして遂に、全てを打ち明けた