第15章 Merry X'mas
「エイ!エイ!!」
『…少し、力みすぎてる』
「?」
次の日、昨日の女の子はまた道場に来た
今日は休みなのに…
『腰はしっかり落ちてる。
肩はもう少し力を抜いて。
拳を突き出すというより、引く方の腕を蔑ろにしがちだからそっちの方を気にするように…。
そして拳の握り方は…』
そう言ってウチの手を取ろうとする女の子
昨日の今日で少し恥ずかしくて後ずさると、その子はその場で手を下ろした
『伊織』
「え?」
『私の名前。伊織。』
「伊織…」
『そう。年はひとつ上だけど伊織って呼んで。
私もエマって呼ぶ。』
「あ、うん…」
伊織…そういえば昨日もそう呼ばれてたような気がする…
伊織は一歩ウチに近づくと、柔らかく微笑んで言った
『綺麗なブロンドの髪ね。
よく似合ってる。羨ましいな。』
「!」
ここに来て、名前も容姿も外人のようだと言われ続けてきた
それは大して気にしてないし、確かに事実だったから何も言わなかった
だけど…純粋に誉められたのは嬉しかった
『これからよろしく。エマ。』
「あ、、うん!よろしく、伊織!」
少し照れ笑いを浮かべながらそう言うと廊下の方から声が聞こえた
「あ、笑ってる。
伊織に先越されたな」
そう少し笑いながら近づいてくると、少し視線を逸らしつつ言葉を続けた
「俺、今日からマイキーになる」
「…は?」
「兄貴の俺がマイキーだったら…一緒だから変じゃねぇだろ?
これからずっとマイキーだ。エマ。」
気恥ずかしそうに、明らかに気を遣ってますと言いたげな顔でそう言うマイキー
サラッと言ってのけた伊織とは大違いだ
「女心わかってないな〜」
『ふふ』
「名前なんか気にしてないし!」
「あ、笑った」
うん、不器用すぎて笑えるよ、本当に
「惚れんなよ?」
「バーカ。伊織みたいなスマートな人がウチのタイプです〜」
『あら、嬉しい』
「お前らいつのまにそんな仲良くなったんだよ!」
『女心の理解の差じゃない?』
「ねー!」
でも、この日からずっと側にいてくれたから…
寂しいと思ったことはないよ
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