第14章 Choice
そして最後に振り上げた手がゆっくりと下されると、彼女は乱暴に目元を擦りながら俺の上から退いた
完全に、俺たちの間に越えられない壁が反り立った瞬間だった
もう俺は彼女の涙を拭うこともできないし、乱暴に擦った目元を撫でてやることも、冷やしてあげることも許されない
ザク…ザク……
「…」
彼女が立ち去るのを視界の端で捉えても、俺は立ち上がる気になれなかった
目では見えなくなっても、こうして地面に横たわっている方が、彼女の踏み締める雪の音をしっかりと捉えることができるから
…最後まで、彼女の足跡を感じることができるから
そしてその気配を感じながら、彼女との日々が脳裏に過ぎる
でも…
これでいい、これでいいんだ
俺と稀咲と彼女、3人の面識があった以上、俺達の関係が稀咲の暴挙に繋がっているかもしれない
その恐れがあるなら、そんなもの、断ち切ってしまえばいいんだ
そしたら彼女は死ぬことはないし、これくらい、大した犠牲じゃない
彼女を含むみんなの命のためならこれくらい…
「…」
そして、完全に彼女の…ヒナの足跡が消え去ると、耐えていた訳ではないが、不思議と涙が溢れてきた
「どうしよう…大好きだ…!!!」
ついに涙と共に込み上げた本音が、白い息と共に宙へと登り、そして溶けた