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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第14章 Choice


『聖本の翻訳よ』

「セイホン…?」

『ああ、聖書とかの類って言ったらわかるかな?
そうだ。その前に大寿さんがクリスチャンだって言っておかないといけなかったわね。』

「ああ、それは知ってます!」

『そうなの?それなら話は早い。
でも本当に…大寿さんは相当熱心な信仰心の持ち主よ。
あそこまで入れ込める人はなかなかいないわ。』

「そうなんですか?」

『ええ、本棚いっぱいにそういう本があって、私もちょっと感動しちゃった。』

「へえ…」




全く興味も関わりもない俺には想像すらつかないが、黒龍の奴といい伊織さんといい…
仮にも暴走族の総長がそんなものに身を賭してるなんて2人の口から聞いてもイメージが湧かない

そんな俺を他所に、伊織さんは言葉を重ねていく




『それで、その中のギリシャ語なんかの本を訳すのが私からの対価だった。
時間がある時に彼の家に行って、勝手に訳して勝手に帰る。
そしてたまに顔を合わせた時に器具を受け取ったり、要望なんかを交えたりしてた。』

「なるほど…」





何はともあれ…ひとつ謎が解けた

伊織さんはやっぱり裏切ってなんかないし、みんなに秘密にしていた理由も正当
さらには無駄なことなんかじゃなくて、場地さんたちの命を救うのにちゃんと必要な繋がりだった





「…ていうか…伊織さんギリシャ語読めるんですね…」

「サラッと凄いこと言ってますけど…」




相棒とふと我に帰ってそう言葉を漏らす
…それって伊織さんが未来人だとか医者だとか除いても相当凄いような…





『別に、大したことじゃないわ。
昔少しだけそっちの勉強したことあるってだけで、ペラペラ喋れる訳じゃないもの。』

「へぇ…
あっ、じゃあこの前三ツ谷くんと見たあの紙…」

「あれギリシャ語だったんですね…!」

『紙…ああ、あのメモ達…
大寿さん…アレ捨ててなかったのか…
字汚いし、何書いてるかわかんなかったでしょう?』

「三ツ谷くんもわかんなかったって困惑してました」

『だろうな…ちょっと恥ずかしい』




伊織さんは小さく照れたように笑う

…ということは、
伊織さんと大寿は本当にお互い個人的な取引をしていた
そして伊織さんが変に大寿から圧力を受けていた訳でもない…
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