第14章 Choice
「そんな…ことって……」
伊織さんの言葉があまりに重くて、うまく頭が回らない
そんな大きなことを俺ができるなんて思わないけど…伊織さんを疑うなんてことも俺にはできない
ただ言葉を失い続ける俺の表情がみえているかのように伊織さんは優しい声色で言葉を続ける
『未来の千冬くんはいつも私を守ってくれてた。
こんなに何度も失敗してる私を見捨てずに、何度も何度も情けない姿を晒す私に幻滅せずに、ずっと側にいてくれた。
それだけで私はいつも救われてきた。』
「そんな、情けないなんてこと…」
『…本当に感謝してる。
でも…だからこそ、君にはこれ以上負担を掛けたくなかった。
他の誰より、この話を聞いて欲しくなかった。
君の優しさを知る私なりに、それが君のためだと思っていたから。』
「…」
『ごめんなさい。本当に。』
伊織さんは少し掠れた声でそう言った
…タケミっちの語るものとは違う想い、違う言葉
そして、今まで手が届かないと思っていた人の思い、その全てが俺に向けられているという感じたことのない感覚
頭が、胸が、、、色々なものでいっぱいだ
『…これから先、君はきっと数えきれないほど苦しむときがくると思う。
今はまだわからないだろうけど…必ず1人でこの秘密を抱えるのを苦痛に感じる日は来る。
しかもその時は私もタケミっちこちらにはいない。
本当に1人きりで、誰も君を助けてくれる人はいない。』
「…」
『だから、、、その時は何も迷わずに、その時を生きる私にその苦痛をぶつけて欲しい。』
「…え?」
その時を生きる伊織さんって…
何も知らない伊織さんにってことか…?
思わぬ彼女の言葉に反応が遅れる
『八つ当たりでもなんでも。このことについては何も我慢しないで。
原因も責任も、元々は全て私たちにある。
これくらいしか、私たちに出来ることはないから…
…側にいないなら何もできない。』
「…」
側にいないなら…
ああ、元の世界では伊織さんは外国にいたんだっけ…
きっと数えきれないほど悔しい思いをずっとしてきたんだろう
手が届かないことがどれだけ歯痒いことなのか、それを嫌というほど感じてきたはずだ
何故だか自分のことよりその事の方が悲しくて、思わず手を握り込む