第14章 Choice
ピピピピ ピピピピ
「あ、」
千冬と2人、並んで帰路に着いていると、携帯から着信音が鳴り響いた
ポケットの中からそれを取り出しディスプレイから名前を確認する
「っ!伊織さんだ!!」
「!」
「もしもし伊織さん!
あ、あの、、俺っ、」
俺が電話に出ると、千冬は正面に立って俺の瞳をじっと見つめる
伊織さんには話すことが沢山ある
…何から話そうか…
『うん、色々あるのはわかってるけど…まずはタケミっち…中々時間取れなくてごめんね。
今日の幹部会も。』
「あ、いえ、俺の方も色々と…」
『ええ。
…ごめん、でも少し待って。
先に悪いんだけど…千冬くんと今一緒だったりしない?』
「千冬?一緒ですよ。」
『よかった。
なら一旦変わってもらえる?少し…2人で話したくて』
「あ、はい。
…千冬、伊織さん。2人で話したいって」
「あ、ああ、わかった」
俺は携帯を千冬に渡す
千冬の手は少しだけ強張っていて、表情も緊張の色が濃い
「俺、少し向こうに行ってるから…」
「わかった」
2人で話したいという伊織さんの言葉を聞き、俺は千冬の声が聞こえないくらいの距離から見守る
…2人でってことは…俺が未来のことを話した件なんだろう
「千冬…」
白い息と共に呟いた名前は誰にも聞かれることなく空へと溶けていった