第14章 Choice
「伊織〜見せてよ〜!」
『やだ!
普通に見よ!とりあえず!!』
「じゃああとで見せてくれる?」
『考えとくから!』
「絶対な!」
『考えとくって言ったじゃん!!』
万次郎の奔放ぶりに頭を抱えたくなる
でも、少なからず綺麗だと言われたのは嬉しいわけで…頬が緩み熱を持つ
体内の熱を放出する様に大きく息を吐くと、隣の万次郎をチラリと盗み見る
「…」
綺麗…
万次郎は視線を空に向けていた
彼に吹かれて彼の髪が靡く
そしてその漆黒の瞳には、数え切れないほどの光が散りばめられ、黒曜石の中にダイヤモンドがあるような
…いや、彼の瞳はそんなものよりも遥かに美しい
思わず見惚れていると、万次郎の目が私のそれを捉えた
「?なに?」
『…万次郎の目、綺麗だった』
「俺の?」
『星が写って…キラキラしてて…本当に綺麗だった』
嗚呼、自分の語彙がないのがもどかしい
綺麗
こんな安っぽい言葉でしかその瞳を言い表せない
「伊織俺の見たのー?ずるい!」
『はっ!?』
「ってことで、伊織のも見せて!』
『万次郎さっき見たじゃん!!これでおあいこ!』
「ケチ」
『別にケチで結構!
ほら、見ないと勿体ないよ!』
「ふーん」
万次郎のほっぺをぐいっと持って空に向ける
まだ少しむくれてたけど、とりあえずは星を見ることにしたようでぼうっと空を眺める
私もそれに倣って空を覗く
見れば見るほど綺麗で、手が届きそう
「…あの星ケンチンだ」
『え?』
「あの1番でっかいヤツ。後ろにちっこいのいっぱい引き連れてるし、何よりデカいからケンチン。」
『どれ?』
「ほら、あそこ!」
万次郎と視点を近づけ、彼の指差す星を探す
…大きな星…あれかな、
『あのキラキラ光っててふたつ並んでるやつ?』
「そう!そのデッカい方!!」
『へぇ…じゃあ隣の少し小さいのはエマ?』
「うん!で、ケンチンのすぐ後ろの銀のヤツが三ツ谷!
その隣のが場地!」
『それなら…あの二つのそっくりな星はナホくんとソウくんかな、』
「いいな…あとは…」
そう言いながら万次郎と2人で夢中で星に勝手に人を当てはめていく
変なことやってるのはわかってるけど、これがまたどうして楽しい