第14章 Choice
『っ!』
万次郎に言われるがまま、視線を上に上げる
そこには満点の星空が広がっていた
街灯もない、家から漏れ出る光もない、月もない
星の光を邪魔するものは何一つなくて、微かな光を放つ星でさえハッキリ見えた
声にならなくて、ゆっくりと息を吐くことしかできない
「綺麗だろ?」
『うん…』
「今日の朝ニュースで言ってたんだ。
今夜は快晴で月も出ないから天体観測には打って付けだって。
なんか冬の空気がどーとか言ってたけど、とりあえず綺麗なんだろうなって思って。」
『すごい』
「俺どーしても伊織と見たかったんだ…って、、、っ!」
隣の万次郎がそう言いながら小さく笑っているのを気配で感じる
…かと思えば、彼が息を呑んだ
それに気づいていながら、私は星空から目を逸らすことが出来ず、ただただ感動して、自然に目が潤んだまま、その星空に視線を向けていた
「綺麗…」
『本当に…』
「いやそうじゃなくて…伊織の目、すっげえキラキラしてる。」
『え?』
「待ってそのまま!
…まだ見てたい。」
万次郎から聞こえてきた予想外の言葉に顔を向けようとすると、万次郎は私の頬に優しく触れ、私の顔を空へと戻した
その行動の意味はよくわからないけれど、されるがまま再び星を堪能する
「…伊織の目に星が降ってる」
『?』
「反射してすっげえ綺麗」
そう言いながら万次郎はじっと私の目を横から見つめるのが視界の端にチラリと見えた
…そんなことを急に言われるとは思わなくて、思わず横に顔を背ける
「あっ!伊織!!なんでそっち向くんだよ!」
『だってそんなじっと見られたら恥ずかしいじゃん!!
星見たいなら普通に見なよ!』
「俺は伊織の目に写るヤツが見たいの!
そっちの方が綺麗だもん!!」
『なっ!//』
顔に熱が集まるのがわかる
…暗くてよかった
きっと真っ赤な顔は闇に紛れて見えない筈だ