第14章 Choice
「ケンチン今夜は俺ら無理!
2人で海行くって約束してっから!!」
「幹部会?それならケンチンに任せる!
あとから話聞くからヨロシクな!」
ブチッ
「これでよし!」
万次郎は強引に電話を切ると、携帯を私に返してくる
電話の向こう側でけんちゃんがぷるぷる震えて青筋を浮かべているのが容易に想像でき、思わず笑みが出そうになる
『いいの?』
「ケンチンいるなら大丈夫でしょ。
…それに…正直俺、今は黒龍とかどうでもいい。」
『万次郎…』
「わかってる。
三ツ谷も伊織も…みんな放っておけないことくらい。
こんなこと言ってちゃダメだってことくらい。」
『…』
「それでも、今はみんなが危ない目に遭う方が嫌だ。
伊織…だから今だけでいい。
少しだけ、俺の近くにいて。すぐ守れるところにいて。」
万次郎はそう言いながら私の手をぎゅっと握る
私の手に触れている手は暖かいはずなのに、小さく震えている
私はその手に自分の手を重ねた
『万次郎、私この前言ったでしょ?
私はずっと万次郎の側にいるって。嫌って言っても離れてあげないって。
だから今だけなんて言わないで。
万次郎の方こそ、私から離れていかないでね?』
「伊織…」
『約束!』
「わかった!」
万次郎はニカリと笑うと、私の頭にヘルメットを被せた
久々に万次郎の溌剌とした笑顔を見た気がして、私もヘルメットの下で安心したように口角を上げた