第14章 Choice
「伊織」
『けんちゃん…』
優しく諭すように名前を呼ばれて顔を上げる
「迷惑とかじゃねぇよ。
お前が強いのは俺らが誰より知ってる。
だけどな、俺らとお前とじゃあ危ないってのの種類が違う。
…お前が俺らの中の誰かといるってわかってた方が、俺らも安心なんだよ。
だから迷惑とかじゃ絶対ねぇし、これは俺らのためなんだ。」
『…』
「ケンチンの言う通りだから。
それに俺、ちょっとだけ嬉しいんだ。」
『?何が?』
「伊織が東卍だって知られて!
だってみんなに伊織は俺のだって自慢してるみたいじゃん?」
「はあ?」
「何言ってんだよマイキー…」
「だって本当のことだし!
俺ずっと前から思ってたし!!」
『ふふ』
胸を張ってそんなことを言い始める万次郎
話の流れの雰囲気を壊すその彼特有の幼さと無邪気さ、そして素直さに思わずみんな笑みをこぼす
そんなこと言わなくったって、私はずっと前からこの先もずっと万次郎のものなのにな
『そっか…
それなら、わかった。
みんなと一緒にいる!』
「うん!」
「ならこの件はとりあえずいいとして…」
万次郎達は私のその返事を聞くと、安心したような表情を浮かべた
と、柔らかい表情をすぐに一変させたのはけんちゃんで、彼の次の言葉に私たちは全員その表情を仕舞う
「次は幹部会だな。
もうそろそろアイツらも来るだろう。」
「…黒龍なぁ…
そういや場地、タケミっちボコられたって聞いたけどどうだった?
伊織と見舞い行ったんだろ?」
「おう。清々しいほどボッコボコにされてたワ…
なぁ?伊織」
『ええ。
でもその割に上手いこと悪いあたりどころは避けてた。
…あれだけ殴られててあの程度で済むなんて…ある意味凄い。』
「アイツ喧嘩弱いからな〜もうなんか本能的にわかんじゃね?」
「マイキー笑い事じゃねぇぞ?」
「わかってるって!」
けんちゃんが万次郎を嗜めるようにそう言う
…タケミっち…
脳裏にはボロボロの彼の姿、そして千冬くんに秘密を話したと言うときの姿がちらつく