第14章 Choice
『…辛いと思ったことは、一度もないよ。』
「本当か?」
『うん。圭くんなら分かると思う。
圭くんだって、カズくんのために動いてるとき、辛くなんてなかったでしょう?』
「ああ」
『それと同じ。
自分の意志でやってるし、こうやって相談相手もいる。
万次郎達も側に居てくれる。
だから辛くなんてないよ。』
私がそう言って圭くんの瞳を見つめると、彼は少しだけ目を見張り、安心したように息を吐いた
「そうか…それならきっと大丈夫だ!!
お前も、その秘密知っちまった奴もな!!!」
『うん?』
「だってソイツ、いい奴なんだろ?
お前がいい奴って言うんだ。それならきっと、そいつもお前のことを大事に考えてるってことだ。
だから、俺はソイツもお前と同じモンを背負う覚悟くらい持ち合わせてると思うけどな!
お前が辛くねーならソイツも辛ぇことなんかあるわけねーだろ!
寧ろ嬉しいと思うぜ!!お前と一緒のモン少しでも背負えて。」
『圭くん…』
─伊織さん、下がってて下さい
彼の言葉に、脳裏にいつも何かあると私を庇うように前に出ていた千冬くんの後ろ姿が浮かぶ
今触れている圭くんのように大きくて頼りになって、安心する背中だった
…今更千冬くんに聞かれてしまったのを取り消すことができないのは事実
でも、12年間圭くんのことを想い続けられるほど彼の心が真っ直ぐで、覚悟と決意の硬さは人一倍なのもまた事実
圭くんの言葉で胸の中のモヤモヤしていた塊が溶けていくような気がした
『そっか…ありがとう、圭くん。
…ちゃんと話してみる。』
「おう」
ちゃんと一度謝って、話をしよう
タケミチのことも自分のこともまだ許せないけど、千冬くんとは向き合わないと
…彼の心を裏切ることはしたくない
『スッキリした』
「そりゃよかったなー…で、このテープ巻くのもう終わりか?
そろそろ寒ぃワ」
『あ、ごめん!もういいよ服着て。
忘れてた…』
「風邪ひいたらお前のせいな」
『大丈夫。圭くん風邪ひかないから』
「あ?どういうことだ」
『さぁね〜』
「テメェ俺が馬鹿だからって…「到着〜!!」
「あ?」
『あ、』
「…はぁ!?」
「…お前ら、、、何やってんだ…?」