第14章 Choice
「伊織?」
頭の中で結論が出たところで、丁度圭くんの声が掛かる
私はその声に応えるように顔を上げて口を開いた
『よし、、、圭くん、ちょっと服脱いで。』
「は?」
『少し寒いけど我慢して。
5分…いや、3分でいいから。
あ、上だけね。』
「別にいいけど…何すんだよ。」
そう言いながら圭くんはパサリと上着を脱ぎ、鍛え抜かれた上半身を露わにする
無駄な脂肪が全然無くキュッと引き締まった身体を目の当たりにして、自分の発言が中々恥ずかしいものだったと一瞬後悔するが、幸い圭くんは大して気にしてない様子だ
顔を見られる前に彼の背後に周り、先程箱の中から取り出したテーピングテープを適当な長さに切る
『じっとしててね』
「あ?んだそのテープ」
『テーピングって言うの。
あ、ちょっと腕上げて』
「ん、」
なるべく傷周りの筋肉を動かさないようにテーピングしていく
そしてそれを補う筋肉は動かしやすくなるように…
こんな風に動く癖を付けていけば、将来的に動かなくなる筋肉は格段に減る
今圭くんに必要な筋肉と、動かすべきでない筋肉
それを考えながら身体にテープを貼っていく
圭くんは初めの方こそ訝しげな顔を向け、首を傾げていたが、説明を聞くのも面倒だと思ったのか、1分もすればもうテーピングへの興味は削がれたようだった
「…さっきの話だけだよー」
『さっき?』
「なんかあったんだろ?やっぱ」
『ああ…その話…』
不良に絡まれて途切れてしまった会話の内容を思い出しながら相槌を打つ
…そんなにわかりやすいかな…私
「別に全部話せとは言わねーけど、俺には言えねーことか?」
『…』
「相談事なら三ツ谷とかの方が向いてんだろーが、、、俺だって話聞くくらいできるぞ」
圭くんは優しくそう言って私を見下ろす
…そうだったなぁ…
圭くんはいつも1番にみんなの異変に気づく
不器用だけど、みんなのことを誰よりも見てる
そう思い出した時には、私の口はもう動き出していた