第14章 Choice
「伊織…さん…?」
『どういうつもり!!?』
声を荒げる伊織さん
…こんな表情は初めてで、うまく声が出ない
「でも…千冬は場地くんのことも、、全部聞いた上で協力してくれるって…」
『そんなことはどうでもいい!!
思慮が浅いにも程がある!どうして行動する前にもっとちゃんと考えられないの!?』
「そんな…」
ガシャガシャと、伊織さんが声を上げるたびにフェンスが音を立てる
伊織さんの背後から、千冬が心配そうな顔を浮かべながら歩いてきているのか視界に入り、彼女に手を伸ばしながら口を開こうとしている
『安易にそんなことを喋って!これからどういうことになるかわかってる!?』
「でも…!千冬はちゃんと全部わかって…」
『いいや!わかってない!2人とも!!何もわかってない!!!』
「…伊織さ『千冬くんはこれから12年間!!私たちが帰った後もずっと!その秘密を抱えながら生きていかなきゃいけないのよ!!?』
「!!!」
「っ!」
『まだたった14歳の子供が!!そんな大きな秘密を誰にも言わずに生きていく!!
それがどれほどの重荷になるのか少しでも考えた!!?
12年の歳月がどれほど長いのか!仲間に隠しごとをしながら共に居るのはどれだけ苦しいのか!それがわからない!!?』
…そんなこと…1ミリも考えてなかった
ドサッ
『本当に…なんてことを……っ!
よりにもよって千冬くんに…』
伊織さんは俺を押さえつけていた手の力を抜き、フェンスに背中を預けて目元を手で覆い立ち尽くす
俺は伊織さんの手が離れると、その場に崩れ落ちるように座り込む
…俺は…自分のことばっかりで……千冬のことをちゃんと考えられてなかった…
…たったひとつの嘘を吐くにも胸が痛むのに…
これだけ大きな秘密をたった1人で12年間も抱えるなんて…
…言葉にするだけで胸が苦しくなる
取り返しのつかないことをした
頭が真っ白で、何も考えられない
ただただ後悔の念に押しつぶされて顔を下げることしかできなかった