第14章 Choice
「…伊織が強いのはわかってるよ。
エマやヒナちゃんみたいに、ただのか弱い女の子なんかじゃない。
でも…俺たちと一緒にいるって知られただけで付き纏う危険は少なからずあるから…」
『うん』
「…情けない話だよな。」
『そんなことない。
…話してくれてありがとう。』
…心配、してくれただけだったんだ
『…そういうことだったのね。
それなら私もなるべく気をつける。
出来るだけ万次郎達と一緒にいるようにする。』
「え…?」
私がそう言って笑いながら振り返ると、万次郎はぽかんとした顔をしていた
思わずクスリと笑ってしまう
『理由が知りたかっただけだもの。
嫌だったわけじゃない。
それに…私ももうみんなのあんな顔、見たくないから…
もしそんなことで万次郎達が安心できるなら、それでいい』
「伊織…」
『あ、でもトイレまでは着いてこないでよ。
あと、ちゃんと連絡するからここまでべったりくっついておかないでも大丈夫だからね。』
「うん!ありがとう!!
…あ、でも、日がだいぶ短くなってっから家には絶対5時までには帰れよ」
『5時って…早くない?』
「早くない!」
『えー』
「そのかわり、俺らと一緒にいる時は何時でもいいから」
『ん〜、わかった』
私のその返事に満足したのか、万次郎はにこりと笑ってまた首元に顔を埋めた
「…伊織いい匂いする…」
『ちょ、あんまり嗅がないでよ恥ずかしい…』
身体を万次郎から離そうとしても、ガッチリホールドされて離れられない
汗は大丈夫だと思うけど恥ずかしいものは恥ずかしい
「花の匂い?」
『あー…多分香水。
エマにあげた奴と同じメーカーの』
「へぇ、エマ最近そういやなんか付けてたな…
俺この匂い好き。なんの匂い?」
『ラベンダーっていう花の香り。
エマのはローズマリー。』
「ふーん」
『ちょ…もういいでしょ//』
「あ、」
私はバッと立ち上がって万次郎から離れた
ラベンダーの花言葉
【あなたを待っています】
私からはどうしても言えないから…
来るかはわからないけれど、いつか貴方が私に伝えてくれる日を
そして12年後、貴方の側に居れることを願って私は毎日この香りを纏う