第14章 Choice
少し経つ頃には、みんな落ち着きを取り戻していてすっかりいつも通りの会話をしていた
主に今日の集会で見事なポンコツぶりを発揮したタケミッちがみんなからいじられていて、本人は顔を真っ赤にしている
「本当に伊織行かねえのか〜」
噛み締めるようにそう呟きながら私の隣に腰掛けるけんちゃん
どこかその横顔は上機嫌で、私の頬もつられて緩むのがわかる
『ふふ、そうだよ。』
「…やっぱお前いるって思うと安心するわ。
マイキーはさっき言ってたけどよ、俺らもまだ一緒にいれるって聞いて嬉しかったぜ。」
『ありがとう。
…これからもよろしくね?けんちゃん』
「おー、マイキーの面倒みんのも半分頼むぞ」
『それは嫌』
「おい」
石段の上からみんなを眺め、2人でクスクスと笑い合う
…幸せだな…
「あ!ケンチンが伊織独り占めしてる!!!」
「あ?」
「抜け駆けはダメだな〜ドラケン」
「んだよ三ツ谷まで…」
『ふふ、人気者は困っちゃうな〜』
「お前も調子乗んな」
そう言うとけんちゃんはさっき下ろしたばかりの腰を上げ、少し横にずれる
そこに万次郎が座るとその後ろからたかちゃんが続き、そして圭くんと千冬くんに絡まれたままのタケミっちもこちらにやってきた
「伊織は俺の!
さっきも言ってたろ!俺から離れねーって!」
「はいはい」
『ふふ』
万次郎はそう言いながらけんちゃんをじとりと睨む
けんちゃんはその視線を呆れたように受け流し、どうにかしろと言わんばかりの目を私に向ける
私はけんちゃんのそれには気づかないふりをして笑う
「つかさ、伊織最初から留学行かねぇつもりだったならなんでわざわざ集会で言ったんだよ。」
「確かにな、」
『うーん…あんまり深い意味はないけど……
…私なりの牽制ってことかな』
「牽制?」
『そ!まぁあとはみんなへのサプライズ的な?』
「あんなサプライズいらねえよ!」
『アハハッ、ごめんごめん』
「ったく…」
私はそう言いながらチラリとタケミっちに視線を遣る
…その顔、きっと私の言葉の意味をちゃんと理解できたんだろう
私は小さく頷き、そっと目を逸らした