第14章 Choice
「…そんなの…っ、」
マイキーくんの言葉がその場の雰囲気に針を刺した
張り詰めた空気に穴が開く
「嬉しいに決まってる…!!
けど…喜んでいいのか…?俺は……っ!」
マイキーくんは絞り出すようにそう言葉を紡ぎ、眉を寄せて縋るような目を伊織さんに向ける
…こんなマイキーくんの顔…初めて見た…
『!もちろん…!!』
「伊織…」
『これからもずっとずっと、私はここにいたい!
決めたの!!
万次郎が嫌って言っても離れていく事なんてしないから。しつこいくらい側にいて、嫌っていうくらい一緒にいるから…!
だから…っ!』
マイキーくんは伊織さんが最後まで言い切る前に伊織さんの身体を抱き寄せた
伊織さんは一瞬驚きに目を見開くと、その瞳を少し潤ませてマイキーくんの肩口に顔を埋めた
2人を囲む3人は複雑そうな表情を浮かべながらも、どこか安心したような、そんな色を浮かばせている
小さな穴が広がっていく…
冷たい空気が流れ出て、彼らを囲んでいた硬い殻が崩れていくのを肌で感じた
「ごめ……いや、、、ありがとう。」
『うん。』
欠けた月がぼんやりと彼らを照らす
空には深く暗い空と明るく輝く月
その空の下には漆黒の髪を持つ伊織さんと淡い髪を持つマイキーくん
まるで空までも2人が共にいることを望んでいるように、この時の2人の姿は浮かび上がって見えた