第1章 Blanc
『…けんちゃん、、、』
写真に写る彼の笑顔の上をすっと、指を滑らせる。
…たった15歳でこの世を去った彼。
初代東京卍會副総長、龍宮寺堅。
通称ドラケン。
普段からこの時期のことは思い出さない様にしていたからか、今となっては楽しかった記憶も怪しい。
そして彼がいなくなってからのことはさらに記憶が薄れてる。
ただ、ひとつだけ覚えているのは、それからの半年間。
みんなまるで死んだも同然だったこと。
この写真の中の誰も、瞳に光を宿していなかった。
どう過ごしていたのかどうかも覚えていない。
私は中学を卒業すると同時に、アメリカへと留学した。
逃げるように彼等を置いて海の向こうへ逃げた。
昔の、光り輝いていた頃の彼等との約束を言い訳にして。
けんちゃんが居なくなって廃人のようになった彼等との、人一倍傷ついて今にも壊れそうだった彼との、もう意味を成さない約束を守ると口にして。
私は遠くへ逃げた。