第14章 Choice
そう言って男性教師は私の目をじっと見つめる
『…確かにその通りだと私も思います。』
まだ15の私たち
無限の可能性を秘めている私たち
その可能性を自ら狭めるような真似をするなと、そう言いたいのだろう
ここまで何度も言ってくれる先生
…本当にいい先生なんだと思う
「それなら…」
『ですがそのご厚意、もう私には向けて頂かなくて結構です。
自分の道は自分で開きます。』
でも…今の私からしたら、余計なお世話だ
可能性が狭まったとしても、その中に目的の未来があるならそれで良いだろう?
未来を見てきた私はそれがどこにあるのか、そんなことはわかってる
逆にその未来に向けて余計なことは切り捨て、必要なことを選び抜く
「っ、だけど!
確かにあなたが優秀な子なのはわかってる!!
だけど貴方はまだ子供なの!」
…子供、ねぇ、、、
『…次の模試、いつですか?』
「は?」
『校外模試です。
定期的にやってるでしょう?』
「明日…だけど、、、」
『それなら明日のテスト、私がフルスコアを取ったら、もう私の将来のことに干渉しないで下さい。
…失礼します。』
まだ何か言いたそうな2人の顔を見えなかったフリをして扉を閉める
小さくため息をついて角を曲がった
『!…聞いてたの?』
「悪いな。
たまたま通り掛かったら聞き覚えのある声がしてよ」
『盗み聞きなんて、けんちゃんのえっち』
「お前な…」
『ふふ、冗談よ』
私はけんちゃんと2人で並んで廊下を歩く
「…あんなこと言って良かったのか?」
『え?』
「テストでフルスコア取るって…明日だぞ?
それに…校外模試ってむずいやつだろ?大丈夫かよ…」
『大丈夫!
ま、取れなかったら大分恥ずかしいからその時は何も言わないでね?』
私は笑いながらそう言うとけんちゃんよりも数段先に階段を登る
「伊織!」
『ん?』
「…お前はお前の道行けよ。それが結果的に1番俺たちの為になる。」
階段を介してやっと目線の揃う私たち
…けんちゃんはきっと分かってる
今を共に過ごす私たちにも、いつかは別の道を歩む時が来ることを
いつかはみんな枝分かれ、自分の花を咲かせることを
『…もちろん』
私はそう答えて彼に背を向けた