第13章 Result
「話はまだ他にもある!!
ここからの話は…伊織、お前に任せる。」
『了解』
「え、」
伊織さんはゆっくりと一歩前に進み出て顔を上げる
その漆黒の瞳に全員の顔が映り、彼女は全てを見透かすように目を細めた
「伊織さんが話すのか…?」
「嘘だろ…初めてじゃね?」
「…?誰だあの女?」
「俺も知らねぇ」
「血のハロウィンで場地くん助けてた人だよな…?」
伊織さんの登場にみんなが騒つく
…そりゃそうだ
今までほとんど表に出て来なかったと聞いてる
東卍のメンバーですら、ハロウィンの日に初めて見た人間も多いだろう
と、マイキーくんが口を開いた
「お前らの中には伊織のことを知らない人間も多いだろう!
だが伊織は東卍の創設メンバーの1人であり!今までずっと影で東卍を支え続けてきた!
訳あって姿を見せることは少なかったが、血のハロウィンで既に東京中の不良にその存在が知れた今!東卍内でのみ表立って動くことを決めた!!」
「まじかよ…創設メンバーって、、、」
「東卍の脳…あの人だ」
「マイキーの女ってのは?」
「さぁ…」
先程のざわめきとはまた違うどよめきが辺りに響く
…少しして、段々とその声が小さくなっていき、その場の音が消え去った頃にはみんなが伊織さんを見上げていた
彼女は小さく笑みを浮かべており、一度彼女の姿を視界に捉えるとそれ以降誰も口を開こうとしなかった
『…こうやって皆さんの前で話すのは今日が初めてですね。』
決して大きな声を発している訳ではないが、芯の強い高い声
俺たちのそれとは全く別のその音は暗い神社の中で強く響く
『改めまして、高宮伊織です。
皆さんはじめまして。
皆さんは私のことを知らないかも知れませんが、私はこの場にいる全員のことを知っています。
これからもし困ったことがあったらなんでも尋ねてきてください!
可能な限り私が対応します。』
伊織さんはそう丁寧に挨拶すると、とても綺麗な笑顔を浮かべた
まるでそれはこの場には似合わなくて、でもそれがどうしようもなく全員の心を惹きつけて、誰も動かなかった