第12章 Hospitalization
しばらくルナとマナと遊んでいると、そこに影が落ちる
3人で視線を上げると、たかちゃんが私たちの手元を覗き込んでいた
『終わったの?』
「ああ。
ルナ、マナ、兄ちゃんちょっと伊織に用があるから伊織借りるな。」
「えー!まだ遊ぶ!」
『お話終わったらまた遊ぼう?
少しだけ、ね?』
「ならいいよ!」
「ありがとな。」
たかちゃんは優しい笑顔で2人の頭を撫でると、隣のリビングのテーブルに私を誘導した
そこには湯気を上げるカップが二つあって、たかちゃんの用意の良さが伺える
「悪いな、インスタントしかなくて…」
『ううん、いただきます。』
「ん、」
たかちゃんの入れてくれたココアを飲む
美味しい
『たかちゃんこれ、頼まれてたやつね』
「ありがとう。
取りに行ってやれば良かったな…病み上がりなのに…」
『病み上がりって…病気じゃないから大丈夫よ。
それにもう治ったわ』
「良く治りがけが肝心って言うだろ?」
『ふふ、心配性は治らないとも言うわね』
「言うな…」
互いに笑いながらそんなやりとりをする
たかちゃんの家はお金持ちではないけれど、家の至る所に手作りのおもちゃやルナとマナが書いたであろう絵があって、家族の温もりを感じられる暖かい家
…胸の奥底が熱くなる
「何はともあれ、退院おめでとう。
家のこととか困ってないか?」
『大丈夫。前みたいに行動に制限があるわけじゃないからね。
退院の荷物とか片付けとかも万次郎とエマとけんちゃんが手伝ってくれたし…』
「そうか。それなら良かった。」
『…しかも昨日ね、万次郎に怒られたんだ。
喧嘩の場にはもう来るなって』
「…」
『全然万次郎の手、振り払えなかった。
たかちゃんも圭くんもけんちゃんも…みんな背も伸びてるし…やっぱりもうすっかり男の子だね…
もう絶対勝てないや』
「そりゃあな。
…わかったらもうあんな無茶するなよ。
寿命が縮む。」
『うん。もうしない。
みんなのあんな顔も見たくないしね。』
「ああ。」
私はそう言うとひとくちココアを口に含んだ