• テキストサイズ

ONE MORE CHANCE【東リべ】

第12章 Hospitalization


どれほどそうしていただろう

互いに目を逸らすことはしないけど、万次郎がかなり怒っているのはわかる





「…じゃあさ、」

『うん』

「この手、振り払ってみろよ。」

『え、』

「いいから。
両手使ったっていい。解いてみろよ。」

『…っ、』

「ほら、早く」






少し力を入れて手を引くと、その何倍もの力で私の手を握ってくる

捻っても引っ張っても、その手は解けない








「…本気じゃないでしょ、それ。
俺のこと敵だと思ってやれよ。」

『…』

「そんなことで喧嘩の場に出て来たのか?」

『っ!』







万次郎のその言葉で一気に頭に血が昇る

覚悟はしてた

それすら万次郎には伝わってないように言われたから



私は空いている片手で万次郎の肘のあたり、医者になるときに習った、押されたらかなり痛いツボを思い切り押す

その隙に手を抜く







『っ、え、、』

「なに?
そんなとこ持って何がしたいの?」

『痛っ、』

「ほら、このままだと伊織の手、折れちゃうよ?」








確かに押した
思い切り

それなのに、万次郎は眉ひとつ動かさないでさらに私の腕を掴む力を強めた

ミシリと骨の軋む音がする








スッ







『あ、』









困惑した私の顔を見ると、万次郎はゆっくりと私の手を解放した

そして少し赤くなったところを撫でると、私よりも痛そうな顔をしてそこを見つめる








「ほら、解けなかったでしょ?」

『…』

「わかったろ?
こんなにも違うんだ。
いくら伊織が強くても…一度掴まれたらこんなにも簡単に押さえられる。」

『…』

「だから…もう絶対あんな場には来るな。
…せめて…せめて俺に言ってくれ。
頼む…」

『うん、わかった。
…ごめん』

「うん…
俺も腕、ごめん、冷やそ。」








万次郎はそう言って私の少し赤くなった腕に布に包んだ保冷剤を当てると、その上から手を乗せた

ソファに座る私の後ろから包むように私を抱き寄せ、肩口に顔を埋める



まるでそれは私を逃さないように、消えてもすぐに気づけるように、縋っているように感じられた
/ 848ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp