第12章 Hospitalization
「懲役10年は覚悟しろって言われたよ」
「…」
「…」
「短いくらいだよな…」
灰色の作業服のようなものに身を包み、アクリル板を隔てて真っ白な部屋で口を開く一虎くん
その表情には、ハロウィンの日の狂気は欠片も感じられない
…この後一虎くんは少年院に護送される
今日が恐らく、一虎くんの顔をみれるのは最後になるだろう
…次は出所後の10年後
「もう逃げねぇ。
向き合わないといけない。
…場地が、伊織がそう教えてくれた。」
一虎くんは下を向いてそう話す
…一虎くんは伊織さんを刺したことも罪を認めたって聞いた
ドラケンくん達はそれが一虎なりのケジメだからって、それを否定しなかった
「だから…今度こそ、ちゃんと更生するつもりだ。」
一虎くんの、まるで消えてしまいそうな声が狭い部屋に響く
「死ぬなよ、一虎」
「ぇ、」
「っ!なんで…」
「はぁ…テメェの考えてることなんてわかってんだよ
自殺して詫びようなんて許さねえかんな」
自殺って…
ドラケンくんがその言葉を口にすると、一虎くんは図星をつかれたからか、表情に驚きが隠せない
…一虎くん、自殺しようとしてたのか…
「でも、他にどうしたら良いか、、、わかんねえんだよ」
一虎くんは一度上げた視線を再び下に戻し、絞り出すようにそう口にする
その様子に、ドラケンくんはひとつ、息をついて口を開いた
「…マイキーからの伝言だ。
【お前はこれからも東卍の、一員だ】」
「ぇ、」
「【お前を許す。場地と伊織が体張までお前に何が伝えたかったのか、ちゃんと考えてこい。】」
「っ!!」
一虎くんはドラケン君の言葉を聞くと、澄んだ涙を流した
廃車場で復讐に溺れていた時のとは全然違った、純粋で綺麗なそれは頬を伝ってゆっくりと落ちていった
一虎くん、どうかお元気で…