第12章 Hospitalization
「俺は水の匂いって言ったら雨の日だがなぁ…」
「それはまた別!
冬はもっとこう…雨の匂いみたいにむわっとしてなくて、山水みたいな感じの匂い!」
「へぇ…」
想像以上に奥が深くて驚いた
…伊織ならまだしも、マイキーまでその匂いをこんな言葉に出来るとは思わなかった
「ケンチン珍しーね
俺の言うこといちいち気にするなんて」
「あー…たまには、な」
「ふーん
ま、いいケド」
「じゃあ俺こっちだから帰るわ」
「おう!じゃあな〜三ツ谷!」
「またな」
「おう!」
突き当たりで三ツ谷と別れ、マイキーと並んで歩きながら伊織のことを考える
…アイツは嘘をつく時、変に笑う癖がある
所謂作り笑いなんだが、営業用の綺麗すぎるそれとは少し違う
なんというか…無理して笑っているようなそんな顔
昔からずっと変わらない
頭はいいくせに、嘘をつくのはド下手
まぁ、これを知ってるのは初期メンバーくらいだから問題は無いんだが…
さっき、場地の治療のことを話した時、アイツは嘘を吐いていた
…何か隠してる
「ケンチン」
「あ?」
「伊織、今日も変な顔してたね」
「ああ」
このマイキーの言う変な顔ってのが嘘ついた時の顔だ
やっぱり気付いてたか
「…伊織が言いたがらないなら無理に聞かないけどさ、溜め込まないように気をつけてやろう。」
「わかった」
「…それと、やっぱり稀咲の話、乗ることにする。」
「…」
「伊織のことが東京中の不良に知れ渡った。
…何かあった時、対抗できる力が欲しい。」
「マイキーがそう決めたなら、それでいい。
俺はどこまでもついていく。」
「ありがとう、ケンチン。
…伊織は反対するかな…稀咲のこと嫌いみたいだったし、、、」
「さぁな。」
なんで伊織が稀咲を毛嫌いするかは知らない
だがウチの総長はマイキーだ
伊織もそれはよくわかってる
…お前はこれから、どんな選択をして東卍をどこに導いて行くんだろうな