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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第12章 Hospitalization


『けんちゃんの治療したのは私じゃないよ。』

「…」

『あの日出会った医者に、私は最近色々教わってる。
…けんちゃんが刺された時、何もできなくて悔しかったから、、、
口だけじゃ人は救えない。
ちゃんとした知識と技術がないと…』
















私は腕と脚に力を入れて、ゆっくり自分の足で立ってみる












『…手術って、応急処置の範囲ではそんなに難しくないんだって。
要は出血したとこを塞ぐだけ。
…それだけで病院に着いた時に助かる確率が格段に上がるってその人が言ってた。』

「…オイ、」

『だから私はそれを学んだ。
…2度と誰も死なせないように。誰も殺させないように。』

「とりあえず座れって、」

『大丈夫。
脚怪我してる訳じゃないし。』

「だが…」













けんちゃんの静止を無視してまた一歩進み、窓の手摺りに手をつく



…我ながらよくもまぁこんなにスラスラ嘘が出てくるもんだ

こんなこと言ったって、変なこと言ってるって思われてるだろう

でも、構わない



誰になんと思われたって、絶対に誰も死なせないし殺させない

…けんちゃんを死刑囚になんて、私がさせない




私は振り返ってけんちゃんに笑顔を向けた















『でもまぁ!あのときは正直必死でさ!
あんまり覚えてないんだ!!』

「は?」

『なんかこう、、、火事場の馬鹿力ってやつ?血が出てるとこを掴んでただけって言うか…
多分本当の医者が見たら発狂したんじゃない?
血を止めることしか頭になかった。』

「お前なぁ…」

『いや〜今考えたらゾッとするね。
私危うく人殺しになってたかもしれない。
助かって本当に良かった…』

「…」















私がそう捲り上げると、けんちゃんは呆れたように笑って立ち上がった














「今はそういうことにしといてやるよ。
その下手な嘘、特別に乗ってやる。」

『!』

「…パーの時に隠し事してた借り、ここで返させてもらうぞ。」













けんちゃんはそう言って私の頭をガシガシと乱暴に撫でると、私を無理矢理車椅子に座らせて病室へと向けて歩き出した

下からその表情を見上げても悪戯っぽい笑顔を浮かべるだけで、彼の胸中を察することは出来なかった
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