第12章 Hospitalization
それからもけんちゃんと他愛もない会話をしながら、窓が空いてて外の空気と日差しが入り込むロビーに出る
日差しは病室の窓から入るけど、窓は看護師さんしか開けられないから風が気持ちいい
『もう秋だね…』
「そうだな。寒いか?」
『ううん、大丈夫。
…秋の匂いがする。』
「は?なんだそれ」
『なんかわからない?
春には春の、夏には夏の、そして秋には秋の匂いがあるの。
もちろん冬にもね。』
「そんなこと考えたこともねー。」
『本当?
季節の始まりは特にわかりやすいよ。
今までとは少し違った匂いがするから。』
「…雨の匂いはわかるぞ」
『それはなんか違くない?』
けんちゃんの言葉にクスクス笑うと、けんちゃんは私の後ろから隣にあったベンチに腰掛けた
「…なぁ」
『なに?』
「…前俺が刺された時……あの時、治療したのってやっぱりお前じゃねぇのか?」
『…』
「場地が刺された時も治療してたが……普通ならありえねぇだろ?
あんな手術みてぇな、、、」
『…』
「…伊織、お前は一体、、、」
けんちゃんはそう言って両手を組んで俯く
…やっぱり、普通は疑問に思うよね、
今まで大して私のことを知らない人ならまだしも、、、昔の私も知っているけんちゃん達からしたらあり得ない光景だったはずだ
「…きっとマイキーは聞かねえだろうから、、、
アイツは多分今相当弱ってる。
立て続けに3人も死にかけたからな。もちろん三ツ谷も大分キてるよ。顔には出さねぇけど。」
『うん、』
「…特にマイキーは今、不安なこととか心配なこととか、無意識のうちに頭から遠ざけてる。
だからきっと、このことについてお前に聞くことはない。」
『…』
「…お前、最近何かあったんじゃねぇのか?」
けんちゃんはそう言って私の目を見る
じっと、私の中にある何かを探すような、そんな目
サラサラと風が靡いてけんちゃんの前髪を揺らす
…私はそっと目を伏せ、視線を窓の外の太陽に向けるとゆっくりと口を開いた