第2章 Chance
「ん、大丈夫?落ち着いた?」
『…うん、、』
「で?お前は何急に泣き出したんだよ。」
2人に会えて感極まって泣いてしまったけど、落ち着いて考えると大変なことになってる。
「伊織?」
そう言って心配そうに顔を覗き込む万次郎は中学生の万次郎で、自分の肩にかけていた学ランを私の肩に掛けると、ふわふわの金髪を揺らしながら私の名前を呼ぶ。
「放課後になって迎えに行ったら教科書広げたまんま寝てるし、起きたら泣くし、、、幼稚園児かよ。」
馬鹿にした様に笑いながらも優しく頭を撫でるのは中学生のけんちゃん。
エマが毎日結ってる三つ編み、米神のたかちゃんデザインのタトゥー。
あの頃のままのけんちゃん。
『…ごめん、怖い夢見てて…
現実と区別つかなかった…』
「夢?そんなに怖かったの?」
「どんなやつだ?」
『…けんちゃんと圭くんが死んじゃって、万次郎とたかちゃんが居なくなって、、、みんながバラバラになっちゃう夢。』
とりあえず、涙は見てもない悪夢のせいにしてこの場を凌ぐ。
さっきチラリと見えた電光掲示板の日付は12年前の今日だった。
…まさか本当にタイムリープできるなんて、、、
「…ケンチン、喧嘩賭博の件、明日にしない?」
「ああ。別にいいぞ。」
『?なんの話?』
「んー?馬鹿なことやってる奴がいるらしくてさ。
ちょっとシメに行こうかと思ってたんだ。
別に気にしなくていいよ。急ぎじゃないし。」
『へぇ…
…ねぇ、変なこと言ってもいい?』
「いいよ」
『…今って、ちゃんと現実だよね?
夢じゃないよね?』
私がそう言うと、2人は目を丸くして私を見つめる。
と、すぐに万次郎は柔らかい目をして、彼の学ランを羽織ってる私をぎゅっと抱きすくめた。
「ほら、あったかいでしょ?」
『うん。』
「だから、ちゃんと現実だよ。
昨日パーちんの話聞いて、色々考えて、今日も沢山勉強して、、、きっと疲れてるんじゃない?
あんまり溜め込まないでよ。」
「…悩みあんなら聞くぞ。」
2人はそう言ってくれる。
やっぱり私の大好きな2人だ。