第11章 Bloody Halloween
「っ…」
人気のなくなった廃車場
その本来の静けさの中、自分の呼吸音だけが辺りに響く
情けないくらい手が震える
さっき場地を殺そうとした時は躊躇なんかしなかったのに、、、
人を助けるのはこんなにも恐ろしい
…きっと、今まで大切なものを守ろうとしたことがなかったからだ
マイキーの言う通り、大切なもの壊すしか能がなかったから…
…壊すのは失敗してもまた壊せばいい
でも守るのは一度失敗したらもう戻れない
そう考えると、怖くて仕方なくて、手の震えが止まらない
さっきはマイキーに任せろと意気込んだけれど、いざ伊織を前に針を持つと息がうまく出来ない
いっそのことこの場から逃げ出したくなる
「ハァッ…ハァッ!ハッ、ハァッ!」
ポタリ
こめかみから伝った汗が顎から地面に落ちてシミをつくる
伊織は…伊織は怖くなかったのだろうか
さっき、アイツは躊躇いなく場地の体に器具を入れていた
失敗したら、自分が殺してしまうのに
大切な人が死んでしまうのに
俺はこんなにも怖いのに、お前は怖くなかったのか…?
『うっ…!ケホッケホッ……コホッ…!』
「伊織!!」
『…っ、ハッ………カッハ…』
先ほどより随分弱々しくなった呼吸と咳
それを聞いて自分で自分を殴りたくなった
馬鹿か、俺は
っ、怖い?
そんなこと言ってられないだろ…!!
伊織は、伊織はこのままじゃ死んじまうんだ…
伊織は怖いだけじゃねぇ、今は苦しくて堪らない筈だ…!
俺が…俺が伊織を助ける…!
俺は伊織と場地、そしてマイキーたちに救われた
今度は、俺が助けるんだ
俺が大切な人を守る…!
もう2度と、大切な人を失ってたまるか…!!!