第2章 Chance
「で、どうやって12年前に飛ぶんだ?」
「トリガーなら分かってます。
それは僕と武道くん、そして伊織さんとの握手。
僕を間に3人で繋ぐと12年前に戻れる筈です。」
「は?」
「恐らくですけど、12年前に2人に助けられた僕は2人の能力のうちの一部なのかもしれない。
…準備は良いですか?」
『あ、ちょっと待って。』
流石に今から行くのは無理だ。
「どうかしましたか?」
『いや、けんちゃんを救いに行くのは分かる。
でも、せめて明日にしてほしい。』
「?何かあるんですか?」
『いや、医療器具病院からパクって来ようかと思って。』
「は!?
伊織さん何言ってるんですか!?」
「いや…どうせ変える未来だから罪とかの話は良いとして、、、
そもそも持っていけるか怪しいのに、現段階で罪を犯すのはリスクが高いです。
とりあえず行って、今ポケットに入ってるものなんかが持っていけたらそれは考えましょう。」
『でも…』
「伊織さん、恐らく今とは違って昔のセキュリティなんかは結構甘い筈です。
警官の僕が言うのもなんですが、、、現在より遥かに簡単に医療器具は手に入ると思います。」
『…わかった。
なんとかしてみる。』
私がそう言うと、橘さんは立ち上がって手を伸ばした。
私たちもそれに倣い、立ち上がる。
「それでは、行きますよ。」
「ああ。」
『えぇ。』
「伊織さん、、、
どうか、気をつけて。」
千冬くん…
千冬くんは泣きそうな顔をしながら私を見つめた。
『うん!…じゃあ、またね!
行ってくる!!!』
そして私たちは3人、手を握った。
それと同時に、私の意識は深く沈み込んでいった。