第2章 Chance
「…ありがとうございます。」
「で、直人。
俺たちは12年前にタイムリープして、一体何をやればいいんだ?」
花垣さんはそう言い、橘さんはホワイトボードに貼られた2枚の写真を指した。
「この2人の出会いを止めて欲しいんです。
現在の東卍ツートップ、佐野万次郎と稀咲鉄太。
この2人が出会わなければ、東卍は巨悪化しなかった。」
「巨悪化しなかったってことは!橘が死ぬ事件も起こらなかったってことか!!」
「そうです。
だから武道くんと伊織さんはこの2人のどちらかと接触し、2人が出会うのを止めてください!」
「…いや、それは違う。」
『…ええ。』
私と千冬くんがそう言うと、2人は…主に橘さんはひどく驚いて私たちの方を振り返った。
「違うって…どういうことですか!
この2人が揃ったからこそ!今の東卍は…!!」
『いや、違うっていうか…そもそも稀咲と万次郎が会うきっかけを潰さなきゃ意味ないの。』
「それに、マイキー君が変わった直接的な理由は稀咲じゃねぇ。」
「なら、一体…」
『「ドラケンだ/けんちゃんよ」』
「…誰?」
「…」
『…東京卍會初代副総長、龍宮寺堅』
「通称ドラケン。
彼が亡くなったことがきっかけでマイキーくんは変わって、稀咲がドラケン君のポストに着いたんだ。」
『それに、けんちゃんさえ死ななければ、圭くんも…』
「…」
そこまで言うと、千冬くんが唇を噛み締めたのが視界に入る。
「…とにかく、その龍宮寺と言う男を救えば佐野は巨悪化せず、稀咲が東卍に入ることもないってことですね?」
『おそらくは』
「ああ。」
「それなら、龍宮寺が何故死んだのか、覚えていますか?」
「…当たり前だ。
忘れもしない。」
『…』
千冬くんは悔しそうにそう言うが、私はあまり覚えていない。
ただ覚えているのは、たかちゃんから震える声で電話が来たこと。
病院に行くと、冷たくなったけんちゃんが居て、エマが大泣きしてた光景。
あの絶望感しか、覚えてない。