第10章 Betrayal
『…?』
ただ、その表情は驚きでも戸惑いでもない
まるでずっと探していた宝物を目の前にした海賊のような、
歓喜と期待、そして興奮
それらが混じり合った光悦とした表情で万次郎を見上げていた
『…』
なんだ、あの表情は
…ずっと、稀咲は万次郎を苦しめたいのか、単に道具として利用したいのか、、、そのどちらかだと思っていた
万次郎への感情の中にはマイナスのことしかなくて、彼を自分の思い通りにしたいのだと、そう思っていた
でも、あの表情から見とれる稀咲の万次郎への感情…
…敬慕
あの反応は嘘や芝居ではない
本気で見せる表情
…稀咲は万次郎に心酔してる
『………っ!!!』
…っ、そうか…!だからだ!!
だから、自分を側に置きたかった
誰よりも万次郎の近くにいきたかった
そのためにいつも万次郎の隣にいるけんちゃんを殺した
そして万次郎が離れていかないように、自分無しじゃ立てないようにするために、彼を堕とした
全ては、万次郎を自分のものだけにするために…
『…っ、』
狂ってる
行き過ぎた感情
悲しみも喜びも、どんな感情も行き過ぎると、その全ては狂気へと変わる
例えそれが誰かを慕い、尊敬するという感情でさえも
稀咲がどんな過程で万次郎を見つけ、そこに惚れていったのかは知らない
ただ、今はもう手遅れなほどにその思いは膨れ上がっている
…人の感情に文句をつけるつもりはない
思うだけなら自由だ
ただ、
『…万次郎の害になるなら、彼が本当に望まないことをさせるつもりなら………容赦しない』
私は稀咲からその視線を辿って万次郎を見る
…万次郎は安心したような顔をして一人一人の顔を見つめていた