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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第10章 Betrayal


『…やっぱりこの時期は少し冷えるね』

「うん…こっち来る?」

『いいの?』

「うん」












海辺で一緒に空と海を眺めていた

東京の港は灯りがうるさくて星は見えないけれど、港の灯りが水面に写り、星のように煌めく













「…伊織はさ、兄貴のどこが好きだったの?」

『何?急に』

「急じゃねぇよ。ずっと考えてた。
…喧嘩も弱くて、女のケツばっかり追いかけて、、、顔以外いいとこ無いじゃん。」

『ふふ、ひどい言い草。』

「事実だろ?
でも…みんな兄貴を慕ってた。
兄貴はいつもキラキラしてて、あんなにカッコ悪い姿ばかり見てきたのに、、、
なのに、俺の目にも兄貴はどうしようもなくカッコよく見えた。
…なんでかはわからないけど。」

『うん…』

「だから、本当はずっと前から聞いてみたかった。
伊織は兄貴のどこを好きになったのかなって。
伊織なら言葉にしてくれそうな気がしたから。」

















万次郎はそう言いながら私をさらに抱きすくめる















…小学生の頃、私は初めて恋をした



相手は10個も上の不良


とてもじゃないけど現実的な話ではない




所謂、子供によくある憧れからの恋心

甘酸っぱくて、今思えば楽しいだけの淡い思い出



それでも、私は真兄を慕ってた

あの人の背中をどこまでも追いたいと、子供ながらにそう思った




















『…真兄は、、明るかった。』

「ん?」

『いつも真兄は明るくて、周りを照らしてくれた。
下を向きたくなる時も、暗くて周りが見えなくなった時も、決して途絶えることのない光を灯し続けてくれた。
「俺はここだ。着いてこい。」って。』

「…」

『そしてその光は暖かかった。
一生懸命走ってその光に手を伸ばせたら、真兄は優しく包んでくれて、「よく頑張ったな」って、「次はもっと遠くまで行くぞ」って言ってくれるの。』

「…」

『だから私は、真兄の背中を、その光を追い続けたいと思った。
どこまでもどこまでも、着いていきたいと思った。』













そう、まるであの灯台のよう


道標のような人







海にひっそりと立つ灯台


私はそれを視界に入れると目を細めた
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