第10章 Betrayal
「庇う…?
何のことを言ってる」
「…芭流覇羅のアジトで、お前は伊織のことを話さなかった。
お前の中にはまだ、マイキーへの恨みだけじゃない。
まだ何か残ってるんじゃねえのか…」
「…」
ーカズくん!
肩までしかない髪を揺らす少女
随分前の記憶
顔も思い出せないが、短い黒髪と鈴のような声で自分の名を呼ぶ声だけは覚えている
…伊織
あの頃からマイキーの女だと呼ばれていた少女
マイキーの大切な人…
「さぁ、誰だ?それ」
「…」
「俺が庇った…?
笑わせるな。そんな女知らない。」
「一虎」
「俺の敵はマイキーだ。
…邪魔をするなら誰が相手でも容赦しない。」
…何を言っているのか自分でもわからない
伊織を庇った?
覚えていない
そんなつもりはない
俺は復讐者だ
マイキーの大切なものだってなんだって壊す
ただの復讐者
マイキーへの憎悪以外、俺の中には残ってない
いや、それ以外の感情なんか俺には必要ない
ーっ!約束する!!私は…!
…誰だ
その声で俺を呼ぶな
黙れ
俺はマイキーを殺す
俺は、
俺は、、、英雄になる…!