第10章 Betrayal
決戦まで残すところ2日
日もすっかり落ち、秋の虫が心地よい音色を奏でる時刻
人気のない線路の高架下、自転車が多数並ぶ道の真ん中で2人の男が顔を合わせていた
「急にこんなとこ呼び出して何の用?
…ドラケン」
「…久しぶりだな、一虎」
「…」
ーリン
返事の代わりのように、彼の左耳のピアスの鈴が小さく鳴る
…静かに、しかし強く交わる視線
ドラケンー東卍卍會副総長、龍宮寺堅はそっと視線を外すと口を開いた
「やめねえか。こんな抗争」
「…」
「お前に勝とうが負けようが、俺は笑えねえよ。
…わかんねぇよ、一虎。
何でお前がマイキーを恨むんだ。」
「…」
「マイキーはお前に有利な証言をしたんだぞ。
そのおかげで早く出てこれたんじゃねえのかよ。
アイツがどんな思いで…「うっせぇ」
「っ…」
ドラケンの言葉を遮る一虎
…彼の耳にはドラケンの言葉は届かない
…それどころか、聞けば聞くほど自分の中での憎悪が膨れ上がり、今にもぶつけてしまいそうな衝動に駆られる
自分はもう止まらない
いや、止まれない
もう自分の目には敵を狩ることだけしか映らない
…そう彼は思っていた
「2年間…俺の大事な2年間…ずっと塀の中だよ」
「…」
「俺はもうあの頃の俺じゃねえ」
「それでも俺はお前の仲間だ」
「…」
仲間…
その言葉がまた自分を縛る
やっと敵を見つけ、英雄になるために解き放った心をまた、その言葉が縛ろうとする
「…お前のそういうところが気に入らねえんだよドラケン…」
「…」
「明後日の決戦で東卍は潰す」
「マイキーはそんなこと望んでねえぞ」
…敵の望みなんか、知ったことか
その言葉すら出さず、一虎はその場から歩き去る
「…伊織はどうなる」
「…」
「…お前はマイキーを殺して、伊織はどうするつもりだ?」
「…」
「マイキーを完全に恨むのなら、なぜ庇った」
「…」
動いていた足音が、止まった