第2章 Chance
「コイツが落ちた時、お前は違うところから出てきた。
お前が落とした訳じゃねぇなら、、、犯人とグルか?」
「違います。」
「あ?じゃあどう説明する。
本気で未来が分かるとか言うんじゃねぇだろうな!?」
『ちょ、千冬くん…少し静かに、、、』
きっと混乱してるんだ。
今にも掴みかかりそうな千冬くんを宥めて、橘さんに向き直る。
『とにかく、私は橘さんの話が聞きたいです。
お話しいただけますか?』
「はい。
長くなるかも知れませんけど…」
『構いません。』
私たちは3人で医務室の隅のベッドの脇で椅子に座った。
「僕は本来、あなた方に会いに行った7月1日に死ぬはずでした。」
『え?』
「…」
「姉と一緒に祭りに出かけて、2人で共に死ぬはずだったんです。」
『…』
「…」
私と千冬くんはとりあえず口を挟まず、橘さんのお話に耳を傾ける。
「12年前、僕は彼と…花垣武道くんと伊織さんに忠告を受けました。
【7月1日にお前と姉ちゃんは死ぬ、絶対に姉ちゃんを助けてくれ】
【7月1日に海浜公園へ行って、私に会ってくれ】
そう、2人から言われました。」
『私が?』
「伊織さん、そんなこと言ったのおぼえてます?」
『いや、、、そもそも花垣武道って人も、橘直人って言う名前もこの前まで知らなかった…』
そんなこと、言ったっけな…
「…その辺りは正直僕にも分かりませんが、僕はそう言われて必死に勉強し、刑事になりました。
姉を守るために。」
『…』
「…」
「でも、考えられる手は全て尽くしたのに、、、姉を救うことが出来なかった…!
分かっていたのに…!!」
ひどく悔しそうに顔を歪め、両手を握りしめる橘さん。
さっき、私が花垣武道さんを見殺しにしたときと同じ…いや、実の姉なんだ。
それ以上の思いを掛けていたんだろう、その悔しさが少しは理解できる。
「っ、お願いです、伊織さん。
僕に協力してください!!!
僕は姉を救いたい!!!!」
『っ、私?』
「はい!貴方と彼ならきっと、姉を救える!!!」