第2章 Chance
「っ!伊織さん!!」
『どいて!!!通して!!!』
誰かの発した言葉を理解すると同時に、身体が反射的に動いた。
人垣を掻き分けるように前へと進む。
パァァァァァァ!!!
っ、だめ!間に合わない!!!
ガタンゴトンガタンゴトン、、、
『っ…!!』
「はぁっ、はぁっ!伊織さん!!大丈夫ですか!!」
『っ!本当に、落ちるなんて…』
「伊織さん?」
『知ってた、のに…!!』
知ってたのに、助けられなかった。
間に合わなかった。
「「伊織さん!!!」」
『へ?』
「は?」
「下です!下!!!」
慌ててホームの線路内を覗き込むと、小柄な男性を抱えた橘さんがいた。
男性は意識を失っているようだ。
『っ!すぐに手当を!!
誰か!早く彼らを引き上げて!!』
「俺が行きます!」
『頭打ってるかも知れない!なるべく揺らさないで!!』
「了解ッス!」
それから千冬くんと橘さん、駅員さん達の協力の元彼は引き上げられ、医務室へ運ばれた。
『聞こえますか!聞こえてたら私の手握って下さい!!!』
「あの、、、」
『何ですか?』
「貴方は?」
『医師です。』
「え!?医者!?!?」
『?』
「伊織さんがそんなふざけた格好してるからですよ。」
『まぁ!失礼!!
とにかく!頭部に目立った外傷も無く、体の骨も大丈夫そうです。
強いて言うなら膝の傷ですね、、、救急車は必要ないでしょう。
救急箱とかありますか?』
「はい!すぐに!!」
失礼な駅員さんが走って行ってから、私と千冬くん、それから橘さんは神妙な顔を突き合わせる。
「…どういうことだ。」
1番最初に口を開いたのは、千冬くんだった。