第10章 Betrayal
『真兄…久しぶりだね』
「…」
『…アサガオ、好きだったでしょう?
仏花には向かないけど、一輪だけなら良いかなって、持ってきたの』
「…」
『…でもさ、アサガオの花言葉って愛情とかもあるけど、他にも儚い恋ってのもあるんだよ?
…振られてばっかりだった真兄はそんなこと、絶対知らないよね』
返ってくるわけもない返事を待ちながら、手を合わせる
…ここにくるのも私の体感は12年ぶり
ずっと顔も見せないでごめん
『私ね、12年後から来たんだよ。
12年後の万次郎は、ずっと遠くに行ってしまってたから、、、
そうならないように戻ってきたの』
「…」
『信じられないよね。
…でも、ほんとなの。』
ー伊織〜またフラれた、、、なんで??
ー女心ってやつ教えてくれよ〜
ーエマが冷たい…
ー伊織、万次郎のこと頼むな
ーこれからはあんまり危ないことするなよ?
ーいつでも来ていいからな
『…っ、、、戻れるなら、、真兄が死んじゃう前にも、戻りたかった…!!
会いたい…会いたいよ、真兄……っ!』
私たちに沢山のことを教えてくれた真兄
忙しくたって、どんなに疲れていたって優しい笑顔を向けてくれた真兄
いつだって味方でいてくれた真兄
『…ごめん、ごめんね…あの時、、私にもっと知識があれば…
今みたいに戻れたら…っ!』
そしたら、助けられたかもしれないのに…!
『…ごめん…でも、万次郎の方が、辛いよね…
万次郎が1番、真兄に会いたいよね……』
私が泣きそうになってちゃだめだ
私は溢れかけた涙をゴシゴシと拭き去り、立ち上がって、もう一度墓石に手を乗せて目を閉じた