第10章 Betrayal
「伊織…」
『おはよう、けんちゃん』
朝、いつものように私の家に迎えに来たけんちゃん
時間はいつも通りだけど、その顔にはいつもの笑顔がない
「…大丈夫か、頬」
『これくらい平気よ。
見た目ほど痛くないし、大丈夫なとこに当てたから。』
「…やっぱ少し腫れたな」
そう言いながら湿布を貼ってある頬を優しく撫でる
まるで壊物に触れるかのように、優しく
『そう?
でももう痛くないわ。』
「…すまなかった。
俺が1番近くにいて…俺が止めるべきだったのに……」
『気にしないで。
私が勝手にやったことよ。』
「…すまない。」
『もう…けんちゃんのせいじゃないって。
…早く行こ?エマが困っちゃう。』
「ああ。」
けんちゃんは眉を下げて笑うと、バイクのエンジンをかけた
『おはよう、エマ』
「伊織!おはよう!!…って、どうしたのよその顔!!」
『あー、ちょっとね、』
「昨日集会だったんでしょ!?
何があったの?」
『自分で殴られに行った』
「はぁ!?」
ガチャ
「…伊織……」
『あ、万次郎おはよう。今日は少し早いね』
「…顔、見せて」
『大したことないよ。』
「いいから」
有無を言わさない口調に早々に観念して万次郎の方を向く
すると、万次郎は両手で私の顔を包み、私よりも痛そうな顔をした
「…痛い?」
『今は全く』
「本当?」
『本当。だって考えてよ。万次郎達ならまだしも、相手はタケミっちよ?』
「…」
『大丈夫。
見た目以上に平気だから。
っていうか、いつもこれより酷い怪我する人が何言ってるの。』
「…俺は無敵だからいいの。」
『でも、けんちゃんだってたかちゃんだってこれくらい平気な顔してるでしょ?
だから私も大丈夫。』
「…伊織はダメ」
『…私はわざと殴られた。
だから当てるべき所にちゃんと当ててる。』
「…それでも、心配する」
そう言うと、万次郎は私の頬に湿布の上から軽くキスをした
『!?!?//』
「…危ないからもう二度とすんなよ」