第10章 Betrayal
「伊織」
『万次郎、けんちゃん…』
「稀咲、気になる?」
『…まぁ、』
「…そもそもお前稀咲のこと知ってるのか?
俺もさっきマイキーから聞いたばっかだってのに…」
「俺も言ったことないよね。
なんで知ってたの?」
少し肌寒くなった風
特攻服に袖を通した万次郎がそう問う
…なんで、か、、、
…圭くんが何かやろうとしてる以上、ここで圭くんの名前を出すのは良くないな…
『…メビウスの件、少し調べてたから…』
「…ヤバいやつなの?稀咲」
『……メビウスの長内、覚えてるでしょう?』
「ああ。」
『喧嘩はパーちゃんに勝つくらいだし、ボクシングやってたみたいだから元々結構強かったんだと思う。
けど、その程度。
…アイツは正直馬鹿だった。
なのにメビウスは初代。
アイツの力量でチームなんか作れる筈ないのに』
「…」
「…」
圭くんから貰った情報じゃない
私が前に調べたことから言葉を吐き出す
…せめて警戒心だけでも2人に持っておいて欲しい
『…メビウスの創設メンバーはたった2人。
1人は長内、そして、もう1人が稀咲だった。
つまりあのチームは長内を上手く使って稀咲が作り上げたチーム。
たった一年で新宿をまとめた。
どうして2人が袂を分ったのか、本当の理由はわからないけど、稀咲がそれほどの力量を持っているのは事実。』
「メビウスを…」
「…」
『…万次郎、貴方が数を必要とする理由もわかる。
それに、、、稀咲を入れようとすることももう止めないわ。』
「伊織…」
『でも、ひとつだけ覚えておいて。
…稀咲を入れるってことは諸刃の剣。
敵の中にいた私のような存在を引き入れるのと同じこと。
…アイツの頭の中は常に私同様、、、もしくはそれ以上の事が渦巻いてる。
それだけは忘れないで。』
「…わかった。」
その言葉を聞くと、私は少し安心して2人に抱きついた
急な事で2人とも驚いていたが、私はずっとこうしたかった
嫌な未来を見てきた
だからこそ、この幸せな世界での2人をちゃんと確かめておきたかった